鬱病をご存じだろうか。
名前は知っているけど、実態は知らないという人が多いのではないだろうか?
日本において鬱病と診断される人は年々増加していて、問題視されている。

知らないということは、「鬱病の前兆はどのようなものか」「予防するためにはどのようなことをすればいいのか」「どのような人が鬱病になるのか」ということもわからない。
つまり、鬱病のことは鬱病になってから知ることになり「まさか自分が」と後悔することになってしまう。
いま鬱病になるかもしれない人も、自分には縁のない病気だと思っている人も、一応は基本知識を頭に入れておいて、鬱病がどれぐらい自分に近づいているのか、鬱病がどれぐらい自分を侵食しているのかを客観視できるようにしてほしい
目次
- 鬱病ってなに?
- コロナ禍で変化。鬱の原因
- 戦時中よりも戦後のほうが鬱が多かった
- 鬱の原因②「逃げ場がない」
- 鬱にならないための対策
①鬱病ってなに?
鬱病は気分障害の一つで心身に悪影響が出る。
鬱病による精神症状
気分が落ち込む/無関心/意欲がなくなる
鬱病による身体症状
睡眠障害/耳鳴り/頭痛/食欲不振
このような症状が特徴である。
鬱病になってしまうと、日常生活が送れない。仕事に行くどころか、起きて朝食を食べることも困難になってしまう。
健康的に過ごせている人には想像できないかもしれないが、日本で100万人以上の人がこの症状に苦しんでいる事実がある。その事実を知り、自分なりに予防できるようになってほしい。
そもそも、なぜ人は鬱になってしまうのか。その原因を知ることで予防に役立てていこう。
産業医の大室先生はコロナ禍の前後で原因が変化しているという。その変化も踏まえて考えていきたい。
②コロナ禍で変化。鬱の原因

コロナ前の主な原因は「人間関係」
日本企業の特徴は「家族」的な人間関係。その企業で育てられ、面倒を見てもらい成長していき、やがては育てる側に回るというサイクルである。
育ててもらった恩義をいつまでも持ち続け、理不尽に耐えたり、飲み会に付き合ったり、違うと思ったことでも忖度する。こんな日常が当たり前。
でも、本当の家族でもないのにそんなことを強要されても困る。(本当の家族でも困る。)その日常は確実に人々の心身を擦り減らし、やがて精神病を発症させてしまう。
こうして鬱病になる人は多かったということだろう。
コロナ禍の主な原因は「将来への不安」
コロナ禍での緊急事態宣言。それはそれぞれの生活を一変させた。
ステイホームにリモートワーク。それまでの「人間関係」や「満員電車」などから解放された人々はストレスを解消させ、鬱病などの精神病なども減少するかと思われたがそうはいかなかった。
先の見えない情勢、新しい働き方への順応、業績の不安。まとめると「コロナ禍でどのように生きていけばいいのか」という将来への不安が人々を苦しめることになった。
自分もZOOMでのオンライン授業に取り組むなかで試行錯誤することとなり、はじめてみれば楽しい部分もあったが、始まる前は正直不安で仕方がなかった。
大きな環境の変化はストレスを受けやすいようで、これはコロナ禍だけに限ったことではない。
③戦時中よりも戦後のほうが鬱が多かった

人間は変化に弱い
人間は変化に弱い。それは生存本能の一つで避けることはできない。
変化にストレスを感じる人間は、安定を求める。
安定するということは、このまま生きていける安心感につながる。保険のセールスマンは不安を煽り、安心を買わせ、ガッポリいただくという本能に語りかけるビジネスである。
コロナ禍においては、安定・安心が得られず誰しもが急激な変化を強いられる状況で不安で一杯。
これは戦後の状況と似ているらしい
戦後の日本の様子
戦中は「生き残る」というシンプルな考えでいいので、鬱にはならないし、自殺者も少ない。
でも、戦後になると状況は変わる。
焼け野原を前に「どうやって生きていけばいいのか・・・」と将来に不安になる人が続出し、鬱病になる人が増加したようだ。
ちょうどそのころに東京海上という日本初の保険会社が誕生することからもわかるように、日本全体が不安にさらされており、何かにすがりたい気持ちだったことが予想できる。
まずは人は変化しなければいけないときにストレスを感じると理解しておきたい。それだけでストレスを感じる感性が高くなるはずである。
④鬱の原因②「逃げ場がない」

鬱病になりやすい状況がもう一つある。それは「逃げ場がない」状況である。
自殺の主な原因は「孤立」
コロナ前から3万人を超える日本の自殺者数がコロナ禍でさらに増加していると言われる。
それは緊急事態宣言や大量リストラなどで孤立しやすくなったことと関係は深い。
そもそも自殺の原因は「孤立」が多い。
学生がイジメを苦にして自殺するケースがある。それは40人学級でみんなから嫌なことをされ、無視され、強烈で耐え難い孤独感を味わうからだ。
40代の男性が自殺するケースも多いのだが、仕事がうまくいかない、リストラされたということと離婚や家庭で相手にされてないという状況下が多く、職場にも家庭にもこの世のどこにも居場所がない(=孤立している)苦痛に耐えられないからだ。
人は自分の存在を認めてくれる居場所がないと生きていけない。
ここでリストラされたら生きていけない人たち
一億総中流社会と言われたのは過去の話。年金もどうなるかわからない、不景気な社会において「働き続ける」ことが生きていく上で必須な人は数多い。
リストラされたら明日から路上生活をしなければいけないという不安に駆られる日々は心の余裕を奪っていく。そして、重労働であっても受け入れて働きつづけることになる。
これは非常にリスキーである。ストレスにさらされながら重労働を続けることは簡単ではない。病気になって働けない場合も出てくる。その時に誰も助けてくれない状況なのである。
3つ以上の居場所を持て
いつも生徒に言っているのは「3つ以上の居場所を持て」ということ。
職場にしか居場所がない人は職場で何かあったときに逃げる場所がない。
職場と家庭の2つの居場所があると、1つの時よりはマシであるがみなさんのご想像通り家庭がいつでも居場所のいい環境なわけではない。
そこで3つ目の居場所が大事になってくる。それはなんでもいい。
学生であればクラス・家に加えてクラブ活動やゲーム仲間、塾なんかになる。
社会人であれば職場・パートナーに加えて趣味やサークルなんかが入ると思う。
コロナ禍で結婚する人が増加したことやオンラインサロンなどが流行した背景には個々が抱える孤独がある。
苦しいときに吐き出せる場所が何個あるのか。
それによって鬱病のなりやすさは変わってくるのである。
その他にも鬱病にならないための対策がある。鬱に侵食され始めたら、何をすればいいのか。それを知ってほしい。
⑤鬱にならないための対策

自分のコントロールできることに集中する
過去・現在・未来
自分・他人
どうにかできるのは「現在」そして「自分」の行動だけである。
過去は変えられないし、未来はまだやってこない。
その事実を踏まえたうえで、いま現在の自分の行動にベストを尽くすしかない。
これはトップアスリートも口をそろえて言うことだし、ホリエモンなどの著名人も同じようなことを言っている。
後悔してもどうにもならない
未来はまだやってこない
だから今できることにベストを尽くそう
言語化する
鬱になりやすい人は自分の体調に無頓着で、いまの体の状態を言語化できない。
20代30代と自分の体との対話をせずにむちゃくちゃな生活を続けた結果、40代になって心と体がボロボロになるケースが多い。
心と体はつながっているし、体の不調が精神面にも影響する。足の小指をぶつけただけで、人は悶絶ししばらくは足の小指に全神経を持っていかれる生き物なのだ。頭が痛い、体が重い。そんな状況で明るく元気に生活することは難しい。
そうならないためにも、自分の体調を言語化し客観的にとらえることが重要だ。
また、嫌なことは誰かに吐き出すだけでも気持ちは楽になる。言語化することで客観的に自分の状況を把握できるからだ。
アスリートでも日記をつけるのは、日々の出来事や自分の内面を言語化し客観視し、次に何をすべきなのかを整理するためでもある。一行でもいいので言葉にする訓練をすることが精神を安定させることにつながる。
人を頼ろう
鬱病になる人の傾向として、「弱さを認めない」「一人で解決しないといけない」「負けない」「男らしく」というキーワードを掲げて、心と体が壊れるまで頑張ってしまう人が多い。
簡単に言うと頼れないわけだ。
人は強くない。強く振る舞っているだけである。能力があれば余裕でできる範囲が広いだけで、ギリギリの状況が続けば負担はかかる。
人に頼ることは恥ではないし、迷惑ではない。後になって大事になるほうがよっぽど迷惑だ。
男らしさは時代遅れ
どうしても求めてしまう「男らしさ」というものも時代遅れになってきている。
鬱の原因の根っこには親からの「男らしくあれ」という呪いが強く残っていて、弱音を吐けないことがあるということがわかってきた。
ジェンダーレスという言葉も一般的になってきたように、男らしくとかを求めるのではなく
「自分らしく、自然であれ」と言葉をかける時代だと言える。
さいごに
鬱になるのは弱いから?
違う。
弱さを認めないから壊れるまで突っ走ってしまう。
自分の心と体に正直に生きよう。
人は弱いことを認めて、人に頼りながらみんなで生きていこう。
そんなメッセージを伝えていきたい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
あしたからも生徒のために汗をかきましょう!!